江戸の京むすめ「第10回 スタートの秋」
すっかり秋ですね。
田舎育ちの私は、季節を風の匂いで感じるクセがあるんですけど、藁や籾を焼く煙、枯葉独特の渋くて酸っぱい香り、嗅覚はもちろん、空に浮かぶいわし雲が今年も正しく秋に突入した事を感じさせてくれます。
傷心、黄昏、哀愁・・
加えて秋って何だか少し寂しいイメージがありませんか?海外では9月が新学期だったりするのに、日本人としてこの時期に『心機一転』を遂行し難いのが本当のトコロです。
考えてみたら、パリに赴いたのは9月でした。
今と同じような秋の匂いのその街で、住まいも決まっていないのに到着3日目から仕事を始め、ホテル住まいで生活が不安定な上に、初の海外就労で慣れない職場環境。毎日が辛くて泣いて泣いて泣いて泣いて、当時の彼に国際電話をしてはまた泣いて・・
3年前の話です。→巴里の京むすめ
そしてこの秋。
あの時より辛いかも知れません。実際辛いです。でもね、私はまた秋の再出発を計ることにしました。
私、ホンマに“アカンタレ”(ダメな人)なんですよ。緊張や危機感こそが成長の何とやら!と説きつつ、ちょっとした切っ掛けでそのプレッシャーに潰されてしまう。理想の自分像を掲げて追い駆けてるはずやのに、突っ走ってる内に自分自身さえ見失ってしまう。
軽い鬱の症状です。
パリにいた時から描いていたプロジェクトの始動と、新しく専属で携わる企業の立て直し。自分の夢を描く一方で、相方の為にも家事をこなしたいと言う想い。やりたいのに、出来ない。時間はあるのに、身体が付いて来ない。体力的にも精神的にもいっぱいいっぱいで、とんでもなくイライラしていたように思います。
それでも意地っ張りの私は『まだ大丈夫』『まだ行ける』『もっと頑張れる』そう思い込もうと躍起でした。自分を過大評価し過ぎたんですね、きっと。そないに強い人間でもないのに、無理矢理強くなろうとして、結果、一番身近で一番心配してくれていた人に八つ当たりました。
精神科医でもカウンセラーでもないのに、『頑張れ』って言葉が厳禁やって鉄則を知ってたんでしょうか。落ち込んでいるからと言って変に元気付けるでも、動揺して取り乱しているからと言って怒鳴り付けるでもなく、頑張れ、とは逆の事・・
『背負ってるモノを下ろして来い』
と言ってくれたのは、私の異変を私よりも早く察知していた相方でした。
1週間を実家で過ごして、ようやく何となくの明日が見えて来ました。もう少しの時間を要するかも知れませんが、“Starting Over=再出発”それに向けて前に進もうと思います。
そこで、重ねてお知らせがあります。
葛飾区在住の京むすめとして、みなさんにお届けしてきたコラムですが、この回を以ってしばらくのお休みを頂きます。
みなさんはこの“まいぷれ”の語源をご存知ですか?
「My Place(私の場所)My Plasure(私の喜び)」
私が喜びの詰まった生活を送っていたのは、自分の居場所やと豪語していた葛飾です。
私にとっての葛飾は、初めてだらけの新天地から自分のホームタウンとしての認識を持つに至った、京都、パリに続く、今や第3の故郷です。青戸商店街のみなさん、親切にお話頂いたみなさん、その街に連れて行って、住まわせてくれた相方も・・みんなみんな大好きです。
いつかまた葛飾に戻って来たら、今度こそ柴又の帝釈天に行きたいと思います。今度こそもっともっと葛飾を散策したいと思います。
それまで暫しのお別れです。
スタートの秋。
決して終わりではありません。
近い内にお目にかかりましょう。
おおきに、ありがとうございました!