
地域に根ざしてご活躍をされている店主の方々へのインタビューをお届けします
| 第56回 「アイデンティティ」 串宿 店主 長澤さん | ||||||||||
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西武池袋線の富士見台は、こじんまりした街だ。おなじ沿線の練馬や江古田など商店街がひしめく駅に比べると、店やネオンの数は少ない。それゆえ、「串宿」を営む長澤さんも、「オープン当初は、お客さんをいかに呼ぶかに腐心しました」と、苦労を隠さなかった。ただ、それでもこの場所を選んだのは、「地元」というキーワードが潜んでいるようだ。
高校を卒業して以来、長澤さんは人生のほぼ半分を飲食業界で過ごしてきた。炭火焼とは15年来の付き合いだ。焼き鳥のチェーン店に身を置き、店長まで上りつめ、新宿や池袋、ときには神奈川まで足を運び、店を切り盛りした。かねてより目標としていた独立にあたっては、焼き鳥店に勤めたこの10余年の経験が糧となり、「実家に近い富士見台を選んだ」という。 自らを「職人気質」と評する長澤さんの、料理に対するハードルは高い。こと炭については、彼のこだわりが強く込められている。 「炭火焼は素材そのものの美味しさを引き出してくれます。素材自体も、その日仕入れた新鮮なものばかり。その新鮮さを楽しんでもらえるよう火加減に注意しながら焼き上げています。ジューシーで、且つ香ばしい。美味しいですよ」 さらに炭で焼くと、時間が経ったときにその特長が顕著に表れるそうだ。曰く、「いつまでも肉の軟らかさが残る」のだという。串宿では、炭火焼のこの特性を活かし、テイクアウトも承っている。 だが一方、料理に対するこだわりゆえのジレンマもあった。美味しさを追求するために、長澤さんは注文を受けてから焼き始めるが、オーダーが重なるとどうしても時間がかかってしまう。腹を空かせた利用者が焦れてしまうこともしばしばだった。 利用者の心を掴むのは経営の生命線だ。ましてや人通りの限られた街では、リピーターの獲得は外せない。職人としての譲れぬ味と、経営者としての立場との狭間で、彼は葛藤した。 しかし思えば、飲食業界に惹かれたきっかけも人生の半分をかけた道のりも、原点は旨さの追求にあった。「自分は料理から入っている」という自覚が、長澤さんを厨房に集中させる。リーズナブルな価格も功を奏した。店を構えて1年半、次第に客足は増え、常連もつくようになった。年輩の人々を中心に、最近では若い利用者も増えつつあるという。 「おかげさまで、地元密着の店になっています」長澤さんは笑顔を見せる。 「少しずつ山を登っている感覚ですね。今後さらに客層を拡げたい」 職人としてのプライド――およそ20年かけて培った自身のアイデンティティが、経営者としての長澤さんを支えている。 取材・文◎隈元大吾 |
![]() 「ゆくゆくはもう一店持ちたい」と長澤さん。 富士見台は実家にもほど近い。 ![]() 壁に鎮座する大型のプラズマTV。 楽しい団欒を一層引き立てる。 ![]() 本格炭火で焼く店主こだわりの串焼き。 いずれも素材の風味を楽しめる逸品だ。 |
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串宿
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