
地域に根ざしてご活躍をされている店主の方々へのインタビューをお届けします
| 第51回 「針の速度」 エムジェイワット 店主 田山さん | ||||||||||
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もう数年前の話である。久しぶりに実家に帰ったところ、近所の時計修理店が違う店に変わっていた。かつては一畳にも満たないほどの狭いスペースで、特殊な眼鏡をかけた店主が黙々と作業に没頭していたものだ。とはいえ、筆者も頻繁に通っていたわけではない。世話になったのは年に一度ぐらいのものだったろう。しかし時計が突然、止まったときには、ずいぶんと助けられた。時流なのだろうか、そのような店はついぞ見かけなくなった気がする。
練馬駅北口弁天通りの商店街の一画で、時計の卸とともに電池交換から細かい修繕まで請け負っている田山さんはいう。 「いまは携帯電話がありますからね。お金があればそちらに使うのではないでしょうか。実際、いま時計をしてない若い女性は多い。私たちが会社を興した当時は、ディオールやグッチ、エルメスなど、海外から仕入れたその日にすべて捌けたものですが……」 田山さん夫妻が起業したのは、20年ちかく前のことである。時計の卸を扱う会社に勤めていたご主人が独立し、巣鴨に事務所を構えた。前述の有名ブランドを中心に、大手電気店や時計専門店に商品を卸す。バブル景気の影響もあり、忙しさに人手が足りず、多いときは数名の従業員を抱えていた。 だが風船が弾け、技術革新によって時代がさらにデジタル化していくと、それまで売れていたはずのブランドさえも売れ行きが鈍くなった。夫妻は住まいのある練馬に事務所を移し、兼ねてより行なっていた電池交換や修理の請負、またインターネット販売にも力を注ぐようになった。 さらに事務所のディスプレイには、マニアなら涎を垂らしそうな時計も安価で並んでいる。じつはかつても、一時代を築いた「G-SHOCK」をブレイクする以前から仕入れるなど、本物を見極める目はさすがに鋭い。「先見の明などない」と笑うが、長年この世界で培った人脈も含めて、彼らゆえにこそ成せる業だろう。 「時計は職人の手による芸術です」田山さん夫妻は口を揃える。 「正確さを求めるのであれば、街で売られている1,000円の時計のほうが確実でしょう。でも手づくりの時計は、物質ではなく職人たちが脈々と受け継いだ英知の結集。そこには正確な時間を示す以上の作品としての価値があるんです。そんな時計ならではのよさも、知ってもらえたらうれしい」 最後に、こう言い添えた。 「ご近所のひとたちの時計を直していたころから、ずっと変わらない値段でやらせていただいています。これからも変わらずに続けていきたいですね」 時計の世界に身を置いて26年を数える。時が経ち周囲の景色は変わっても、田山さん夫妻が刻む針の速度は、むかしから寸分も狂っていないようだ。 取材・文◎隈元大吾 |
![]() 田山さんは夫婦二人三脚で 店を営んでいる ![]() マニアが喜ぶブランドも並ぶ。 価格も良心的 ![]() 練馬駅近くのお店 |
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エムジェイワット
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