
地域に根ざしてご活躍をされている店主の方々へのインタビューをお届けします
| 第50回 「パンの時間」 ブランジェリー ウルス モリ 店主 森さん | ||||||||||||
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幼いころ――まだ小学校に上がるまえの話だ。家の近所に素朴な佇まいの小さなパン屋があった。水泳教室の帰りにはいつも、母が手を引いて連れて行ってくれた。 初めて口にしたときの衝撃が忘れられない。芳ばしい香りが口中を満たし、美味しさに病みつきになった。ショーケースに並ぶ品々を吟味するのも楽しみのひとつだ。プールに行くのはあまり気乗りがしなかったが、その店があると思えば通う気にもなれた。「大きくなったら絶対にパン屋さんになろう」少年はいつしか、思いを強めていた。 目標を抱いてからの道のりはまさしく、“パンありき”の日々だった。中学・高校時代は父の経営する弁当店で製造を手伝い、厨房の仕事をひと通り身に付けた。製菓の専門学校で知識や技術の幅を広げると、卒業してからはベーカリーに就職、現場でパン作りを会得した。生活を切り詰め、欲しい物を我慢したのも、開業資金を蓄えるためだ。こうして、晴れて「ブランジェリー・ウルス・モリ」を開いたのは、まだうら若き23歳のときである。 「365日、パンにかかりきりですね」店主の森さんは笑う。 「朝は3時から仕込みますし、定休日にも必ずお店に出て準備をします。休むことも、寝ることすら儘ならないので、体力的にはたしかにキツイ部分もある。でも、手を抜かない姿勢は大前提。失敗って、誰かがなんらかのズルをするから起きるものだと思うんですよ。僕はただ美味しいパンをつくりたいから、僕自身に対して厳しくなれる」 彼のいう「厳しさ」は、つくり出すパンにも大きく反映されている。手作りをモットーとしているため、店には秤や麺棒、オーブンなど、必要最低限の機器しか置いていない。生地に添加物は一切使わず、仕込みから焼き上がりまで、すべて自分で管理する。出来上がったパンが少しでも気に食わなければ、店頭に並べることはしない。 焼きたての時間を示さないのもまた、森さんのこだわりの表れだ。 「気温や環境によって、パンの出来上がりは毎回のように変わります。だから僕は、型どおりにタイマーで時間を区切ることはしません。様子を見ながら、生地も焼きも一番いい状態で出す。僕の時間に合わせるのではなく、パンの時間に僕が合わせるんです」 開店当初から人気をさらった店は、4年が経ったいまも、毎日たくさんの利用者が訪れる。口コミで評判は広がり、陽が照っている時間にショーケースが空っぽになることもしばしばだ。 「うれしいですね」森さんは目を細める。 「ひとつだけ買うのを躊躇う方がいらっしゃいますが、そのひとつのために来てくださる思いが僕はうれしい。この練馬春日町という街を盛り上げたいという気持ちも強いんです。地元のお客さんに支えてもらってここまでやってこられたので、美味しいパンをつくって恩返ししたいですね」 芳ばしい香りを漂わせながら、いつも焼き立てのパンで利用者を迎える。かつて憧れた近所のパン屋と自身の店を、森さんは重ね合わせていた。 取材・文◎隈元大吾 |
![]() 自身を“パン馬鹿”と評する森さん ![]() 環八沿いのお店。 遠方から足を運んでくる利用者もいる ![]() 人気の焼きたてパンは 種類豊富に取り揃えている |
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ブランジェリー ウルス モリ
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