
地域に根ざしてご活躍をされている店主の方々へのインタビューをお届けします
| 第46回 「再生」 居酒家あきば 店主 秋葉さん | ||||||||||
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その瞬間の記憶はない。ただ在るのは、自分の命、そして「半身不随」という現実だった。
バイクが好きだった秋葉さんは、通っていた地元山形の高校の卒業も待たずに整備工として修行を積み、休日にはサーキットで自らスロットルを回していた。「レースで食っていこう」とは思わないまでも、仕事でも趣味においてもバイク三昧の日々だった。そんなある日のことだ。好きなことを謳歌する24歳は、サーキットのうえで事故を起こす。首の骨を折る、一歩間違えれば死に繋がってもおかしくない大怪我だった。 「いま思えば……」と、彼は振り返る。 「あのころの自分は、どこか浮き足立っていたと思います。実際、周りに影響され、流されている自分に気付き始めていた。『なんかフラフラ生きているなァ』と思っていたら、事故に遭いました」 だが事故の大きさを思えば、命を失わなかったのは奇跡に近かった。骨折はしたものの、神経はわずかな傷に止まったのである。さらに半年間の入院生活のあいだに、何も掴むことのできなかった左手は力を漲らせ、まったく動かなかった左足は車いすを要さないほどにまで回復した。焦点の定まらぬまま宙をさまよっていった眼も、落ち着きを取り戻した。もとの肉体は、確実に蘇りつつあった。 退院した後、秋葉さんはしっかりと一点を見据えていた。 「このまま田舎に引っ込んでいたら、またしても浮き足立った生活に逆戻りしてしまう。東京に行って、心機一転、何か新しいことを始めよう」 準備など何もない。カバンひとつに決意だけを詰め込み、彼は山形を飛び出した。 バイクの整備工として知人の店を手伝いながら、縁あって中華料理店でも働くようになる。出前持ちを任されるあいだに調理師免許を取得し、次第に独立の夢を馳せるようになった。晴れて「あきば」を立ち上げたのは、5年ほどまえのことである。 「今後は店をもっと大きくしたいですよね」と、彼は笑顔を見せる。 「その気持ちがないと、やっていてもつまらないでしょう。いまのご時世は、皆さんいい生活をしていても、外食にお金を使わなくなっているように思います。そこに幸せを求めてないように映る。でもだからこそ、うちの味を楽しんでもらいたいですね」 さらに、こう言い添える。 「上京してからというもの、あっちに行きたいのかこっちに行きたいのか、気持ちを絶えず問いながら、自分と向き合って生きてきました。あの事故が、やはり自戒になっているんでしょうね。両足で地面をしっかりと踏み、足元を固めて、行けるところまで行きたいと思います」 40歳を超えたいま、「人生でもっとも体調がいい」と、秋葉さんは笑う。新たな挑戦が、ふたたび始まった。 取材・文◎隈元大吾 |
![]() 店主の秋葉さん ![]() 家庭的な雰囲気が漂うお店 ![]() 看板メニューの「もつ皿たれ」 |
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居酒家あきば
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