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路傍の晶 でじま  店主 峰さん

コラム

地域に根ざしてご活躍をされている店主の方々へのインタビューをお届けします

路傍の晶

第38回 「江古田の母」 でじま  店主 峰さん
 駅前の大通りの喧騒から逃れるように道を折れ、数十メートル歩いたところに、「でじま」はある。千川通りに通じる裏道にひっそりと軒を出す店は、しかし扉を引くや、にぎやかな笑いと店主の明るい声で客を迎え入れてくれる。

「基本的に、なんでも作りますよ」店を構えて20年、姉とともに切り盛りする峰さんは笑顔を絶やさない。
「旬の魚も出しますし、たとえばお好み焼きの台もあります。お酒もあれば、デザートやコーヒーも用意する。イメージは家庭料理。材料があればなんでも作ります」

 料理のルーツは、生まれ故郷の長崎に潜んでいる。日本でも有数の漁場に恵まれる長崎に生まれ育った峰さんは、幼い頃から魚に触れていた。日ごろから母を手伝い、夏休みや春休みなど長い休みとあれば、祖母の家に赴き、厨房に立つ。そのうちに、魚の下ろし方や料理の仕方を自然と身に付けたのだった。

 高校を卒業して東京に出てきてからは、市場の食堂やレストランなどで腕を磨いた。結婚して子どもができると、娘や息子たちのために腕を揮った。
「とにかく子どもには、おなかいっぱい食べさせるのがいい。そうしようと思ったら、食事もおやつも、自分で作るのが一番なんです」
 育児がひと段落すると、彼女はこうしたさまざまな経験をもとに、念願の店を開いた。

 壁に貼られたメニューは和洋を問わない。「20年間ほとんど変わってない」という価格も良心的だ。といって、九州の合わせ味噌の原料を取り寄せ自ら仕込むなど、料理に対するこだわりも貫く。

 さらにメニューにはない料理、たとえば客の体調が悪いときなどは、症状にあわせた料理を考えるという。
「カゼをひいていたら雑炊を作ったり、おなかを壊していたらからだにやさしい鍋焼きうどんにしたり。材料さえあれば、からだの具合にあわせて作ります。また、たとえば独身のお客さんが、仕事の都合で銀行に行く暇がなければ代わりに行ったり、雑用も結構やっていますよ」そう言って、峰さんは笑った。

 11時から夜の11時まで開いているあいだ、店内に声が途絶えることはない。
「お客さんがお客さんではないというか、皆さん、家族のような感覚なんですね。毎日、それぞれにいろんな話があるでしょう。真剣な話も他愛ない出来事も、ここにいる皆んなで聞く。うちは物を売るだけの店じゃない。持ちつ持たれつ。売り上げどうこうじゃなくて、こうやって皆んなでいろいろ喋りながら店にいるのが楽しい。からだが続くかぎり、やっていきたいですね」

 いわゆる「家庭料理」といえば、文字通り、家庭の食卓に並ぶような素朴な味を思い出させる。だが、でじまはそれだけに止どまらない。雰囲気も含めて、「家庭」なんである。そんな店を営む峰さんは、さながら、“江古田の母”の様だった。

取材・文◎隈元大吾

「店に立っているほうが調子がいい」と峰さん
「店に立っているほうが調子がいい」
と峰さん


居心地のいいお店に数時間とどまる利用者も
居心地のいいお店に
数時間とどまる利用者も


舌を飽きさせない豊富なメニュー
舌を飽きさせない
豊富なメニュー

でじま
住所: 〒176-0005
練馬区旭丘1-55-9
アクセス: 西武池袋線
江古田駅より
徒歩2分
都営大江戸線
新江古田駅より
徒歩7分
電話番号: 03-3954-9788
営業時間: 11:00〜23:00
定休日: 月曜


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