
地域に根ざしてご活躍をされている店主の方々へのインタビューをお届けします
| 第29回 ダイニング・バー・Bacu 店主 駒場さん | |
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下町の風情を感じさせる商店街に、一面ガラス張りのモダンな雰囲気を醸し出す店が目に飛び込んでくる。もともとは洋品店だったこの物件、現在はひとびとの腹を満たす飲食店に生まれ変わっていた。その名を「ダイニング・バー・Bacu」という。
縁とは不思議なものだ。店舗がかつて洋品店だったならば、現在の店の主人もまた、かつては服飾業に携わっていた。店主の駒場さんは「Bacu」を立ち上げるまでの15年間、京都で服地のデザインを施す職人だったのである。 「厳しい世界でしたよ」駒場さんは懐かしそうに振り返る。 「職人が身に付けるべきものはなにかといえば、もっとも大事なのは“加減”なんです。色の濃淡からデザインの配置も含めて、加減、言い換えればバランス感覚が重要。でもこれは言葉で教わったからといって、簡単に理解できるものではない。結局は自分で身に付けるしかないんです。だから時間もかかるし、厳しい」 生来の負けず嫌いも手伝ったのだろう、彼は厳しい環境下でも音を上げることなく師匠のもとで技を磨き、遂には独立のお墨付きをもらった。師匠の首を縦に振らせるまでに要した時間が、15年だったわけである。 目標であり意地でもあった独立を果たした駒場さんだが、一方で服飾業に達成感を得たのも事実だった。さらに、長年の京都暮らしで帰ることのできなかった生まれ故郷に戻りたいという思いも後押しした。そして心機一転、兼ねてから興味を抱いていた飲食業に転身することを決意する。慣れ親しんだ東長崎に現在の店を構えたのは、いまからちょうど3年前のことだった。 だが飲食業の一年生に、世間の風は厳しかった。「1年目は大変でしたよ」と、思わず苦笑を漏らす。ただ、厳しい環境には慣れていた。「もしこの場を離れるとしても、絶対に実績をつくり、惜しまれて出て行ってみせる」職人時代にさらに強さを増した負けん気で、客の入らない日も駒場さんは厨房に立ち続けた。 ところで、Bacuのメニューはじつに多彩だ。その理由は、京都にいたころ、神戸に足繁く通っていたことに起因する。「神戸はドイツ料理もあれば中華料理もある。そのとき触れたいろんな味が忘れられなくて、自分なりにアイデアを膨らませて、メニューに入れました。家庭の食卓でも、和洋中問わず、いろんな料理がおなじテーブルに並びますよね。その感覚をリーズナブルに再現したかった」 手ごろな価格でさまざまな味が楽しめる。そんな店の評判は、口コミで次第に広がった。1年目こそ苦労したものの、いまでは若者や地元のひとびとが席を埋め、ときには女性がひとりでふらりと立ち寄ることもあるという。 3年目、折れることなく持ち続けた駒場さんの夢は、さらに膨らむ。 「ここで終わらせるつもりはありません。ゆくゆくは、もっと広いお店にしたいですね。また僕が身に付けた料理の要領を、ひとに教えたい」 職人として培った“加減”は、厨房に立ついまも人知れず活きている。そしてかつては駒場さん自身が教わっていた大切な肝の部分を、今度は誰かに伝えたいと願っている。 取材・文◎隈元大吾 http://www.scn-net.ne.jp/~jps/ |
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