
地域に根ざしてご活躍をされている店主の方々へのインタビューをお届けします
| 第23回 Fresh Orange-Cake 手作り専門工房コンセール 当主 吉江さん | ||||||||||||||
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母の味が忘れられない。息子が幼い頃から、母はソフトクリームや、いまでいうチーズフォンデュを食べさせていた。
まだ戦後間もない時代である。あらゆる物資は不足し、牛乳やチーズなど一般家庭ではなかなか手に入らない贅沢品だった。しかし母は、石油ランプの揺れる部屋で七輪のうえに鍋を置き、牛乳を煮立て、コッペパンを付けて食べさせてくれた。けっして裕福な家庭だったわけではない。「いったいどこで牛乳を手に入れたんだろう」歳を重ねても、疑問は募るばかりだった。 鉄工所の家に生まれた吉江さんは、10代の頃から父の傍らで仕事を手伝っていた。住み込みの従業員がいたこともあり、賄いをつくる母の厨房にも手を貸した。 料理のルーツは母だと、彼はいう。 「母方の祖父は貿易商を営んでいました。そういった家庭環境もあったのでしょう、いま思えば母はとてもモダンなひとだった。だから貧しさを言い訳にせず、できるかぎり私にもいいものを与えようと努力してくれたのだと思います。味覚のセンスはもちろん、チーズフォンデュのような斬新な食べ方を知ったおかげで、物事を違う角度から見る目も自然と養われましたね」 大学の機械工学科を経てトヨタ自動車に入社してからも、「違う角度から見る発想」は仕事の現場で役立った。「山はどこからでも登れる。目標さえしっかり見据えていれば、どこから始めてもこたえに辿り着ける」設計を担当していた吉江さんは、固定概念に縛られることなく、さまざまな切り口から開発の可能性を拡げていった。 仕事に没頭する日々のなかで、唯一の息抜きは料理、とくに菓子づくりだった。趣味は家のなかに留まらない。帰宅後に夜中こしらえたシュークリームを職場で振る舞い、ときにはクライアントにも手土産として持参した。また出張先のホテルでオレンジのクレープシュゼットに出合ってからは、その味に魅了され、自身のレシピにくわえた。吉江さんの味はいつしか趣味の域を越え、周囲に求められるものになっていた。退職してから「コンセール」を立ち上げることになった所以である。 「オレンジが大好きなんですよ」と、吉江さんははにかんだ。 「だからオレンジを美味しく食べてほしいと思って、私なりの商品をつくりました。たとえばマーマレードなら、通常はじっくりと煮詰めるんですが、うちではさっと煮てオレンジの風味が逃げないうちに火を止める。癒し効果のある皮も含めて、このままでもゼリー感覚で食べられますよ」 このマーマレードをはじめ、オレンジケーキ、そしてクレープシュゼットは巷でも人気を博した。先のゴールデンウィークには銀座のデパートに出店し、在庫が追いつかない売れ行きも記録している。今後は全国展開も視野に入れているということだ。 「美味しいデザートを食べてもらうために、本当はお店をサロンにして、フランス料理のフルコースを用意したいぐらいなんですけどね」吉江さんは無邪気に笑う。 「食事の時間は幸せを与えてくれる、とても大事なひとときですから」笑顔で噛み締める言葉は、母から学んだいちばんの教えだった。 取材・文◎隈元大吾 http://www.scn-net.ne.jp/~jps/ |
![]() * 当主の吉江さん * ![]() * 手作りにこだわっている * ![]() * オレンジを使ったデザート * |
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Fresh Orange-Cake
手作り専門工房コンセール
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