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路傍の晶 ぷくぷく  店主 大河原 角さん

コラム

地域に根ざしてご活躍をされている店主の方々へのインタビューをお届けします

路傍の晶

第11回 ぷくぷく  店主 大河原 角さん
  フロアのほぼ中央に2台のダーツマシンが据えられている。開業して約1年半が経つが、現在の機種を初めて導入したのは昨年12月、2台目もこの1月に入れたばかりだ。しかし、まだ日の浅いこのダーツマシンこそが店の看板になりつつあると、店長の大河原角さんはいう。

 「遊び心のある大人の方が多いんです。一人で来られても、ダーツやお酒を介していつの間にか皆さんのあいだで会話が生まれる。逆に、ダーツを置くまではなかなかお客さんが集まらず大変でした」

 まだ10代の頃、欲しい単車のために居酒屋でアルバイトを始めると、彼はすぐに料理や接客の楽しみに引き込まれた。以来、さまざまな店を渡り歩き、行く先々で厨房を切り盛りし、時にはホールにも立った。大手チェーン店では店長を任されもした。だが仕事を楽しむ一方で、いわゆる接客マニュアルには馴染めなかったという。「マニュアル自体はよく考えられていると思います。でもお客さんにも色んな方がいますから、その時々で応対も変る筈。規則に縛られることなく、自分の裁量で自由にお店をやりたいと思うようになりました」。独立を決意したその日、まるで運命の糸に手繰られるように、あるテナントが空いていることを彼は知る。即座に飛びついたその場所が、「ぷくぷく」に生まれ変った。

 晴れて2004年9月に開業を果たしたものの、しかし経営は芳しくなかった。江古田には居酒屋が多い。まして駅から少し距離があるとなっては、宣伝の効果も薄れた。「なにかお客さんを惹きつける目玉が欲しい」逡巡して不意に思いついたのが以前、大河原さん自身も興じていたダーツだった。いまでは常連客とともにチームを結成し、自らも矢を握ってトーナメントに出場するほどの熱の入れようである。

 さらに、かつては利き酒に凝っていたという大河原さんは、酒に対するこだわりも並々ならない。「日本酒は生きていますから、封を開けると風味が変ってしまう。だからできるだけ使い切るように、常に少数しか置いていません。ブランドではなく美味しいお酒を自分で選んで仕入れています」。棚には地方の蔵で朝できあがったばかりの日本酒や季節限定の酒、20年以上寝かせた焼酎など厳選した品々が並ぶ。

 開店当初は苦労した店も客足が増え、いまでは休みがとれないほど軌道に乗ってきた。だが31歳の若大将に満足はない。「階下の宴会スペースにはカラオケを用意してますから、家族連れの方にも利用して欲しいですね。もちろん一緒にダーツをやってワイワイ騒いでもらってもいいし、一人でゆっくり飲みたい方にはカウンターや地下の店を思い思いに使ってもらいたい。お客さんが帰られるまで、僕は付き合いますから」

 「お客さんと接する楽しみが、この仕事をしている一番の理由」だと、大河原さんはいう。店が幅広い年齢層に支持されているその訳は、自慢のダーツマシンではなく、またこだわりの日本酒でもない。総ての根底に潜んでいる若大将の客を思う気持ちが、それぞれの心を射止めたのだ。
  
取材・文◎隈元大吾
http://www.scn-net.ne.jp/~jps/
店長の大河原さん
* 店長の大河原さん *

自慢のダーツマシン
* 自慢のダーツマシン *

棚には厳選された酒が並ぶ
* 棚には厳選された酒が並ぶ *




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