
地域に根ざしてご活躍をされている店主の方々へのインタビューをお届けします
| 第5回 カフェ・ラルゴ 店主 多 幸久さん | ||||||||||||
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テーブルや椅子が並ぶフロアの一画に、一段高いステージが備えられている。置かれているのはピアノ、そしてクラシックギターだ。「5歳の頃から弾いてたんです」マスターの多幸久さんはそう言いながらギターを指差し、すこしはにかんだ。「喫茶はもちろん、音楽好きの方々にもここを使ってもらって、演奏を楽しみながら情報交換の場になればいいなと思いステージを用意しました。私も音楽が好きなものですから、そんなお店をやりたかったんです」 宮内省で雅楽を演奏する一族に多さんは生まれた。クラシックギターも父に勧められて始めたものだ。だが当初はよく解らぬままに手渡されたギターもいつしか虜になり、寸暇を惜しんで練習に没頭した。学生時代を終え会計士として社会人となってからも、仕事以外の時間は片時も楽器を離さなかったという。その腕前は、スペインギターコンクール第2位という実績が証明している。 多さんが25年間勤めた会計士の仕事を辞め、「カフェ・ラルゴ」をオープンしたのは昨年11月のことだ。カフェのノウハウを学び、内装を整え、本来ならば8月には店をスタートできる筈だった。がしかし、あるこだわりが生まれたために、さらに時間を必要としたのだという。芽生えたのは、「自家焙煎」というこだわりである。 「店を始めるまえに、日本全国の有名な喫茶店に足を運びながら、次第に自家焙煎をやりたいと思うようになったんです。なぜなら、まず味が違う。店をやるならこの味を出したいと思ったんです。ただそのためにはコーヒーの生豆を焙煎する知識が必要。その勉強に時間を費やしました」 コーヒーの味を決めるのは一般的に、生豆が7、焙煎技術が2、抽出が1といわれている。全国を歩いた際に知り合ったひとたちの力添えもあり、多さんはまず品質のよい生豆を仕入れるルートを確保した。そして自身のハンドピックによって欠点豆を選り分け、選び抜いた豆を焙煎し、焙煎したのちも煎りムラを取り除く。ピッキングの様はまるでギターの弦を爪弾くようだ。そうした過程を経た豆が抽出され、ようやくコーヒーとして芳醇な香りをふり撒きながらテーブルに並ぶのである。 「焙煎はギターの演奏に似ている」と、多さんはいう。 「産地によって豆は特徴が違います。硬くて火が通りにくく焼くだけでは酸っぱいだけのものもあるし、一口に酸味といっても色々な種類がある。個性あるそれぞれの豆をいかに焼き、自分の手でどんな味に仕上げるのか。かつて有名な指揮者が『譜面の裏を読め』と言いましたが、スコアを分析し自分なりに表現するのとおなじ楽しみが、自家焙煎にもある。だからこそ私は惹かれたんだと思います」 豊富な種類を取り揃えるカフェ・ラルゴに、”おすすめ”はない。多さんの手によって特徴を引き出されたコーヒーたちはいつも、最良の香りを店内に漂わせている。爪弾き紡ぎ出された音の雫がコンサートホールを優しく包んでいくように、とてもゆったりとした速度で――。 取材・文◎隈元大吾 |
![]() * マスターの多さん * ![]() * ステージを備えた店内 * ![]() * 芳醇な香りをふり撒くコーヒー * |
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カフェ・ラルゴ
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