
地域に根ざしてご活躍をされている店主の方々へのインタビューをお届けします
| 第1回 ヘアースタジオ パレット 店主 大越 浩さん | ||||||||||||||
|
ヘアースタジオ「パレット」の扉を開けて真っ先に目に飛び込んでくるのは洗面台でもパーマの器具でもなく、巨大な水槽である。「もともと海が好きで、開店当初から設置しています」趣味でダイビングを行ない、アクアリストの顔も持つ店主の大越浩さんは笑う。27歳で独立してから10余年、彼が髪を切る横で様々な魚たちがこの水槽を泳いできた。現在ここの住人になっているカクレクマノミは、愛娘のリクエストだ。ディズニー映画の主人公となって以来、巷でも人気を博している海水魚である。 ただ当初は娘のために飼育を始めたクマノミも、いまではそれだけに留まらなくなった。 「昨年1月に飼い始めたんですが、そのうちに卵を産み、孵化した。問題は稚魚をどう育てるか。飼育の知識はあっても繁殖のノウハウはなかった。それでいろいろ調べて稚魚の飼育のサイクルが出来上がったころに、クマノミの乱獲報道を耳にしたんです」 映画で一躍有名になった魚が沖縄の海で激減しているという事実に、大越さんは胸を痛めた。それならばと、自らの手で育てたクマノミを本来あるべき海に返すことにした。仕事の合間を縫って石垣島に足を運び、生態系を壊さぬよう細心の注意を払いながら放流を試みる。最初は低かった生存率も、回数を重ね試行錯誤するうちにほとんどが生き残るようになった。 「ひとつのことを続けるのが大事」と、大越さんはいう。 「たとえば海に入っていれば波は必ず来るでしょう。でも諦めて海から上がってしまえば、波は永遠に訪れない。乗ることもできない。それとおなじで、何事においても投げ出さずに続けていけば、やがては目標を達成できると思うんです」 おもえば彼の人生も、その言葉と重なるかもしれない。高校2年のころ、たまたま入った理髪店のマスターの仕事ぶりに感銘を受けた。楽しそうに鋏を操り、仕上げる髪型も素晴らしい。「こんなに人を感動させる仕事があるんだ」大越さんはすぐに高校を辞め、マスターの背中を追った。学歴を重視する風潮のなか周囲からは猛反対を受けたが、それでも「逃げ道をつくると甘えが出る」と、理容の道に専念した。あのころから20年以上が経ったいまも変らず胸にあるのは、「理容師として一生を貫く」という信念である。 テレビで取り上げられたことも手伝い、カクレクマノミは期せずして店のマスコットとなった。だが「僕にとって魚はどれも一緒」と、大越さんはいう。「大きな意味でいえば、自然を守りたいんです。そのためには一人一人の意識が変ることが重要。放流を推奨する訳ではなく、これを機に自然環境に対する世間の意識が高まってくれれば何よりうれしい」。 水槽の向こうからは、今日も髪を切る小気味いい音が聴こえてくる。楽しそうに鋏を走らせるその姿は、海に放たれ自由に泳ぎまわる魚を思い出させた。魚にとって海が本来の場所なら、大越さんにとってのそれは「パレット」である。扉の奥に広がる空間は総て、彼の信念の結晶だった。 取材・文◎隈元大吾 大越さんの活動は以下のサイトでご紹介されています。 フジニュースネットワーク(FNN)http://www.fnn-news.com/ 『ニモと一緒に』からご覧ください。 |
![]() * 店長の大越さんと奥さん * ![]() * 店内の大きな水槽 * ![]() * お店の顔にもなっている『ニモ』 * |
|||||||||||||
|
ヘアースタジオ パレット
|
||||||||||||||



